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後継者のいない会社を買うメリット

2021.06.01

「会社を買う」とは?


中堅・中小企業において複数の事業を展開している企業が増えてきている。祖業(既存事業)の一本足打法では外部環境の変化に耐えられない場合もあるため、成長目的と同時にリスク回避の役割を求めて複数の事業を展開していると考えられる。しかし、「事業の柱を増やす」ということは、生半可な行動では実現させることはできない。一つのアイデアを事業と呼べるレベルにするためには、ある程度の売上高・利益が必要になる。すなわち「収益モデル」の確立である。事業の収益モデルを確立する作業を一から実行していく場合(オーガニック成長)には、多くの時間とコストがかかる可能性がある。一方で、そのような努力を重ねて立ち上げた事業でもわずかな売上高・収益しか生まない可能性がある。オーガニック成長がもたらすこのような課題を解決する施策として、M&Aやアライアンスが存在する。「会社を買う」とは、すなわち、事業を立ち上げるための時間を短縮し、収益モデルが確立している事業を自社の中に取り込むことを意味するのである。


「会社を買う」とは?|後継者のいない会社を買うメリット

後継者のいない会社の内情


後継者がいない会社は、中小企業の中で127万社に上るといわれているが、そもそも「後継者がいない」という状況はなぜ生まれるのだろうか。これは、現経営者側と後継者候補側のいづれにも問題がある。
①【経営者側】 事業承継のタイミングを逃す「判断の遅れ」
事業承継はよく「重要だが緊急度は低い」と言われる。創業者やバリバリ働いている経営者は、自分が明日経営から退くとは微塵も思っていないだろう。いづれは会社を誰かに託さなければならないと思いつつも、その日がやってくるのはまだ当分先であると。また、「この企業を成長させるためには自分の力が必要である」とも感じているだろう。なぜなら、その会社を成長させた、あるいは存続させてきたのは紛れもなく現経営者の功績だからである。この部分に間違いはない。しかし、常に自分の次の世代を考えて動くことは、経営の一部である。後継者候補の採用や育成には時間がかかる。事業承継が「どれだけ早く着手しても、早すぎることはない」といわれる所以である。
②【後継者候補側】 「継ぐ気がない」又は「会社を継ぐ準備ができていない」
オーナーから親族へ会社を引き継ぐ際に、親族が拒否をする場合がある。親族は家族がこれまで経営してきた会社ではなく、自ら選んだ仕事に生きがいを見出した場合はそちらを優先するだろう。特に、昨今の若い世代では、苦労して家業を継ぐよりも、自分のやりたいことを優先するのではないだろうか。また、会社を親族に任せる場合でも、社員に任せる場合でも、準備には時間をかける必要がある。明日から経営を託されて実行できる人材はそうそういない。特に、社員から経営者になる場合は、社員として見ている目線と経営者としての目線は大きく異なる。社員が常日頃から経営者目線で会社を見る訓練が必要である。継ぐ側にも準備ができていないことが後継者不在の状況を生んでいるのである。


後継者のいない会社の内情|後継者のいない会社を買うメリット

後継者のいない会社を買うメリット


後継者のいない会社はそのままでは「廃業」又は「倒産」に至る。しかし、会社を譲る直前になって事業承継の準備を始めても間に合わないだろう。そこで、「譲渡」、すなわちM&Aを選択肢として検討するのである。後継者のいない会社のM&Aの場合、譲渡側と譲受側の双方にメリットがもたらされる。
譲渡側には当然ながら「後継者不在」を解消する効果がもたらされる。すなわち、「企業の存続」の可能性が高まるということである。また、譲渡側の社内で、親族が引き継ぐか、社員が引き継ぐか混沌としている場合がある。そのような場合に、第三の対策として、外部の第三者に会社を託すことで社内の争いを治めるための手段となり得る。
一方、譲受側にとっては、「成長M&A」ということで自社を強化することに繋がるといえる。廃業や倒産をさせてしまうには惜しい中堅・中小企業は多数存在する。それらの企業が持つ技術・人材・レピュテーションを自社に取り込むことにより、時間とノウハウを買うことに繋がる。また、別の側面から見ると、「企業の存続」に関わるという社会的意義(大義)もある。M&A戦略を持たずにやみくもに財務状態の良い会社を買収する会社も存在していることは事実であるが、一方で、M&A戦略に基づき、地域の中小企業を救済する目的で買収を検討する会社も存在する。同じ買収でも、目的が異なれば、社会の捉え方は大きく変わる。自社のM&A戦略に基づき、「後継者のいない会社」を買収することで、「中小企業の救済」と「地域経済の活性化」の2つの効果を同時にもたらすことができるのである。
M&Aには上記のようなメリットが存在するため、譲受側は自力成長のみにこだわるのではなく、M&A・他社とのアライアンスも選択肢として検討してみてはいかがだろうか。また、譲渡側は差し迫った事業承継に慌てることなく、M&Aという選択肢を活用することをお勧めする。

トピックス:新規参入よりM&A、そのメリット

「後継者のいない会社を買うメリット」では、後継者不在の企業をM&Aで買収するメリットを「中小企業の救済」と「地域経済の活性化」と結論付けてお話ししました。
本項では実際に新規参入・事業拡大を自社のみで行う場合と比較し、具体的に得ることができるメリットについて言及したいと思います。

●新規市場への参入がスムーズ
余程の新規市場でない限り、既に技術力やブランド力、スケールメリットなどを備えた既存企業がおり、参入障壁として新規参入のハードルとなります。
M&Aで参入した場合、本来であれば参入障壁となる既存企業側として市場に参入できるのは大きなメリットです。競争相手が減り、技術やブランドといった基盤がある状態で市場に参入できます。

●競争力構築の時間を短縮できる
新規事業を立ち上げる場合は、その市場内である程度の基盤を築き上げて一定のポジションを築くのに、短くても数年単位の時間がかかります。M&Aであれば譲渡側企業が持つ事業所などの不動産、設備や商品、組織や人材、顧客、取引先などをそのまま得ることができ、これらの確保にかかる時間を短縮することができます。

●地域基盤の確保
自社とは異なるエリアに販売網を持つ同業他社を買収すれば、既に出来上がっている販売網を入手することができます。特に後継者不在でM&Aを検討している中小企業であれば、全国規模で見るとそこまで大きいわけではないにせよ、地元では絶大なシェアを確保している企業も多く存在します。新規でその地域への参入は絶望的な場合、M&Aで地域基盤のある会社を買う方がメリットが大きくなります。


新規参入よりM&A、そのメリット|後継者のいない会社を買うメリット
このコラムの執筆者
丹尾 渉

丹尾 渉

執行役員
M&Aコンサルティング事業部

2017年からM&Aコンサルティング本部の立上げに参画。M&A戦略構築からアドバイザリー、PMIまでオリジナルメソッドを開発。その後4年間で延べ60件以上のM&Aコンサルティングに携わる。「戦略無くしてM&Aなし」をモットーに、大手から中堅・中小企業のM&Aを通じた成長支援を数多く手掛けている。

主な実績
  • 上場企業の新規事業開発を目的とした譲受側M&Aアドバイザリー
  • 上場企業子会社の事業戦略からM&Aまで一貫性を持たせた戦略構築
  • 上場企業子会社の買収調査のためのビジネスDD、財務DD、労務DD
  • 中堅企業の事業ポートフォリオの転換によるビジネスモデル変革支援
  • M&Aを初めて実施した中堅企業のPMI支援

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